別館 魑魅魍魎

デッド・オア・アライブ

夏の暑い日だった。

 

Twitterでタイムラインを眺めていたら、まぜる〜むcafe(以下まぜ)のツイートが流れてきた。何人か新人が入ったらしい。ライムライトに所属していないキャストが増員するのは珍しいことだったので、どれどれとホームページを見に行く。吉沢千佳...知らないな...どこかのグループのアイドルか?名前でググる。即「解雇」「裏切り」といった物々しい言葉がブラウザ上に踊る。「あーなんか年末くらいにトゥラブでごたごたしてたやつか...」と何となく思い出す。Twitterアカウントを見てみる。そのアカウントは内省しているような、後悔しているような、やり切れない感じのツイートを最後に残し、昨年末から更新は途絶えていた。もう1つアカウントがあるようだ。プロフィールのリンクにnoteがあったため、覗いてみた。いくつかの記事を見て「なんかよく分からんけど、頭が良い人だろうな」と思った。あと、読んでいて普通に面白い。

一度話してみたいと思い、思い立ったが吉日、まぜに足を運んだ。吉沢千佳は思ってたより100倍めちゃくちゃなヤツだった。

唐突に大きな声で性病の心配をし出すし、子宮頸癌ワクチンを打ちたがるし、あだ名をつけてほしいと頼んだ訳でもないのに「元同級生に似てるから」という理由で俺をシノザキ君と呼び始めるし、いったいぜんたいなんなんだコイツは。

ただ、普通の人であれば、隠していたい、仲が深まってから打ち明けたいようなことも平然と話すその姿は爽快さすらあった。そして思っていたように頭が切れ、仕事も鬼のように早い。きっと社会に出て会社に務めれば、重宝されるような人材になるだろうなと思った。

何故来てくれたのかという話の中で、「(noteを読んで)人生経験が豊富だなあと思った」と俺は発言した。それに対して彼女は「よく言われるけど全然嬉しくない」とキッパリ答えた。久しぶりにしまったと心の中で焦った。完全にこちらに落ち度がある、デリカシーのない発言だったからだ。在宅勤務で人と話す機会がなさすぎて、俺はこんな失言を軽々しくするような奴になってしまったのか...と反省し、その時ばかりは彼女に感謝をしたものだった。

 

note.com

このnoteにあることと同じような話をしたことがあった。「でもさ、いつか良いことあるかもしれないジャン♪」なんてまったく言えない。言える訳がない。だってそのいつかはいつになるか分からないし、その道中で死ぬほどつらいことがまたあるかもしれないから。まさに記事の序文にある通りなのである。死にたい人の死にたい気持ちは他人には絶対分からないものと思ってるので、俺はただ聞いていた。聞いても聞いても、彼女はどこまでも正しかった。同時に、こんなにも論理的に、矛盾することなく、死にたい気持ちを言葉で述べることが出来ることがすごいと思った。

この世に生きる価値をどう伝えればいいのか。翻って、俺はなぜ死なずにここまで生き、明日も生きるのか。何年も前に心の奥の戸棚に閉じ込めて鍵をしていた疑問や問いが、ふつふつと湧き出てくる。とても新鮮な気持ちだった。そして、ここ最近引きずっていた心のモヤモヤが、ふっと薄まっていることに気づいた。吉沢のと比べたら俺のモヤモヤなんて小さすぎるよなあ、なんて思った。まさに銀河系から見た地球状態。こう言ったら怒られそうだけど。

 

この言語能力とコミュ力にパラメータを全振りしてしまった躁鬱女は、前述の通り普段は突拍子もないことばかり言って戯けているのだが、18歳らしいところもある。そのジーエーピー、GAPが彼女の魅力の一つだと思っているのだけど、インターネット上では伝わらないのでぜひ話してみてほしい。まあ今日でまぜ辞めるのですが!

 

彼女は今日も戦うだろう。己と。過去と。インターネットと。この日々と。そんな人の生き様を見聞きしたから、俺は死なないのかもしれない。と、夏の終わりの気配が近付く午前4時に思ったりする。