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カニョン探偵事務所/海鼠銃 その1

強く握らなければ 掌から零れ落ちてしまうにょん
けれども 優しく握らなければ ナマコを握る資格はないにょん
今日もアパートのナマコ・セラーでは色とりどりのナマコ達が
にょんの御指名を待っているにょん
奴らは海水と砂さえ与えておけば 文句など垂れない無口なモンク(修行僧)達だにょん
言い忘れたにょん にょんは"アイドル兼しがない私立探偵"だにょん
今日は いつもより早めの帰宅だったにょん
だから まだちょっと クロナマコには早すぎるにょん
おもむろに取り出したフジナマコが にょんの両手の中でピクリと硬くなったにょん
おっと いけないにょん 強く握り過ぎたみたいだにょん
体長約30センチ 表面には沢山の白い粒がラインストーンのように散りばめられ
体色は 日焼けに失敗したブラジル娘の褐色の肌を思わせるにょん
そのヌメリに酔い痴れながら にょんはフジナマコを優しく愛撫するにょん
一度は弾力を取り戻したフジナマコも にょんの手の動きで次第に強張っていくのを
はっきりと感じるにょん 悪戯好きのにょんは更に強く強くしごき続けるにょん
容赦の無い にょんの攻撃に 大人しかったモンクも とうとう怒りを爆発させるにょん
フジナマコの尖端からは滝の白糸のようなキュビエ器官がビュッと吐き出されるにょん
…そんなに早く怒ったら駄目だにょん そんな調子じゃ この街で5年と持たないにょん
と、その時、ドアのベルの音が部屋中に鳴り響いたにょん
すっかり忘れていたにょん 今日はチャイナタウンから
黒髪の美少女リー・ホー・サヤシが特製の「海鼠銃(ナマコ・ガン)」を届けに
来てくれるって さっき事務所に電話があったんだにょん
にょんは フジナマコをセラーに返し 小走りでエントランスへ向かうにょん
ドアを開けると、頬を膨らまして リー・ホーが にょんを睨み付けてくるにょん
にょんは すかさず こう言うにょん
「サヤシには笑顔がお似合いだにょん そんな膨れっ面はやめるにょん…」


まだほんの子供だっていうのに リー・ホーのナマコの扱いは にょんより遥かに上だにょん
ご機嫌斜めだった彼女も にょん自慢のナマコ・セラーの中でも
取って置きのクロナマコで遊ばせたら いつものクールな笑顔を取り戻してくれたにょん
彼女は彼女が何故ここに来たのかを漸く思い出したようで
不意にプロフェッショナルな眼差しを見せるにょん
「これが『海鼠銃(ナマコ・ガン)』じゃ ナマコ言うのは怒るとピュッと
『キュビエ器官』って言う白い糸みたいなんを出すんはカニョンさんも
よく知ってるじゃろ? あれは物凄くネバネバするんよ ほいで そのネバネバが
引っ付いたりしたら 取るのが大変なんじゃ ほいじゃけ そのネバネバ物質を
弾丸代わりにして この『海鼠銃』は出来てるんよ」
「凄いにょん!相手の命を奪う事なく戦いを制圧できる究極の武器だにょん!」
「ほうじゃ ほうじゃ その通りじゃ 一辺ウチが手本を見せてあげるから
ようく見ときんしゃい」
そう言って、リー・ホーは海鼠銃を構えるにょん
見た目はデロンとしていてまるで本物のナマコそっくりな造りだにょん
「射撃もダンスも全く同んなじなんじゃ タイミングが命なんよ!」
と、言うが早いか、彼女はにょんに銃口を向けて海鼠銃を両手でニュッと握るにょん
勢いよく飛び出したネバネバの白い液体は にょんの左の眼にピチャッと音を立てて
張り付いたにょん
「ひどいにょん! ひどいにょん!」
「ああ すまん すまん つい我慢出来んで 出しちゃったんじゃ」
暫く左眼が使い物にならないのが稼業のハンディキャップになるのは間違いないにょん
だけど この武器の凄さを身を持って知らされたわけだにょん
幼いサヤシを責めるのは もうやめるにょん