別館 魑魅魍魎

カニョン探偵事務所/海鼠銃 その2

朝寝坊して 事務所へ急ぐと 秘書のチャチャ・ルルーが仁王立ちして にょんを迎えるにょん
ルルーは左手を腰に置き 右手でにょんを指差して こう言うにょん
「どうして時間通りに来ないのだー!お客様がお待ちかねなんさー!」
にょんは 慌てて書斎兼応接室へ向かうにょん
背中でチャチャのぶっきらぼうな「Bye Bye!」の声が聞こえるにょん
可愛いチャチャ・ルルー ほんの少しのお別れだにょん 挨拶の必要はないにょん

部屋へ入ると一人の女性がソファーに腰掛けているにょん
その後ろ姿のシルエットで それが誰か直ぐに分かったにょん
にょんが幾ら手を伸ばしても絶対に届かない初恋の女性… クマイ・チャン…
ドアの音でこちらを振り向いた彼女は にょんに
「ぬぁんですか?その左眼の眼帯は?大丈夫?」
と 心配そうに尋ねてくるにょん にょんは苦笑いしながら デスクの椅子に腰掛けるにょん
「にょんの事はいいにょん ミセス・チャン あなたの御用件を聞かせて欲しいにょん」
「話しは長くなるけど良い?」
「Take your time nyon and enjoy yourself nyon(どうぞ ごゆっくり楽しんでにょん)」
「ウフフフフ…そうねEnjoyさせて貰うわ Enjoy!」
「そうだにょん Enjoy nyon!」
「Enjoy!…………でもね そういうわけにはいかないの…実は私の夫の事なんです…夫と
いうのは私と結婚した相手の事です 何でその夫と結婚したかと言うと好きになったからです
じゃあ、何で好きになったかと言うと…」
約1時間に及んだ 生真面目な彼女の依頼を要約すると こうなるにょん
「最近 パートナーのナカサキ・チャンの連日の帰宅がとても遅いし 彼の様子がどうもおかしい
だから 『彼女の夫 ナカサキ・チャンの浮気調査』を依頼したい」
たったこれだけの事だにょん お安い御用だにょん


話しが終わり ふと 彼女がデスクに無造作に置かれていた海鼠銃に 8インチの彼女のしなやかな右手を伸ばすにょん
「ぬぁんですか?これは?これと似たようなものを主人の書斎で見たわ」
そう言えば ナカサキ・チャン氏は「ナマコ研究」の第一人者だったにょん
「主人はこれを いえ正確に言うと『これに似たようなもの』を毎晩のように弄り続けていたわ その情熱に 妻である私が嫉妬するほど…」
にょんなら あなたにそんな思いは絶対にさせないにょん…
クマイ・チャンも彼女自身の言葉で思わず力が入ったらしく ギュッと海鼠銃を握りつぶしてしまったにょん 不意打ちを喰らった海鼠銃の口からピュッと例の白い弾丸が飛び出し
ピチョッと彼女の右の頬にへばりついたにょん
「ぬぁんですか!?これは!?」
クマイ・チャンは吃驚して 反射的に右手の人差し指を右頬へと持っていったにょん
「やめるにょん!」
にょんの警告も虚しく クマイ・チャンの右手の人差し指は彼女の右頬にピッタリと貼り付いて
離れなくなってしまったにょん
その姿を見て、にょんは つい叫んでしまったにょん
「こ これは…『ヒロインになろうか』のMVの40秒付近と1分41秒付近で流れる
"クマイ・ガガのキメ顔のポーズ"だにょん!!」
次の瞬間 クマイ・チャンの殺し屋のような眼差しがにょんの平たい胸を貫通したにょん
「じゃあ 後は頼んだから!」
と 彼女は空いた左手で帰り支度を済ませ スタスタとこの部屋から出て行ったにょん
…やってしまったにょん
それでも クマイ・チャンの6フィートのすらっと伸びた長身は にょんに懐かしさと安心感を
久し振りに与えてくれたにょん
…暫くは 誰彼構わず媚を売るのをやめるにょん