カニョン探偵事務所/TRANSQUID その3

「ユウカさんは良い人なんさー ああ見えてえー 本当はユウカさんもドジだからあー
スッゴイ気が合うんです」
「やめるにょん!やめるにょん!絶対ユウカに騙されているんだにょん!
ユウカの奴 『目が覚めた』なんて言ってるけど きっとまだ寝惚けナマコのままなんだにょん!
あいつは平気で嘘を吐く大悪党だにょん!」
「そんな事ないんさー」
「この際ユウカはどうでもいいにょん!にょんは只 チャチャには"美術館巡り"みたいな
上品な趣味を持つ貴婦人のままでいて欲しいだけだにょん!」
「美術館は相変わらず大好き」
「そう それでいいにょん…ところでチャチャはいつになったら にょんと美術館デートを
してくれるかにょん?」
「君君ー!どさくさに紛れて図々しいんさー」
「まだ駄目?」
「うん…もっと勉強して下さいっ!」
その時 電話のベルが鳴り響いたにょん
「はい カニョン探偵事務所…あっナカサキ博士!今日の夜は…ああ別に構わないにょん
詳しい事はその時に…ハイハイ…分かったにょん…伺うにょん」
このタイミングでナカサキ博士からの電話か…何か嫌な予感がするにょん
にょんをまた厄介な事件に巻き込むのはやめるにょん



ナカサキ博士の研究室のある「nksk研究所」に出向く前に ちょっと時間があったので
にょんは「オノレセー美術館」に立ち寄ったにょん
美術館なんてチャチャに会う前は全く興味がなかったにょん
これも彼女との"美術館デート"実現に向けての予行演習だにょん
「オノレセー美術館」はその建物自体がオブジェのようで
未来の宇宙船を思わせるものだったにょん
真っ白な建物に線状に連なる黒い斑点が施されているのが
印象的なデザインだったにょん
入館すると 「『天使とヤコブの闘い』展」が開催されているという事だったにょん
ヤコブとは『旧約聖書の創世記』に登場するヘブライ人の事だにょん
そのヤコブ君が兄のエサウ君との和解を目指す道すがら
何故か天使と取っ組みあう事になったエピソードを『天使とヤコブの闘い』(創世記32章)
と呼ぶにょん
これをモチーフにして何人もの芸術家達が作品を残してきたにょん
…とパンフレットに書いてあったにょん
「オノレセー美術館」では今 その作品群が一堂に会して展示されているらしく
その日も結構な賑わいだったにょん
しかし ヤコブ君も見上げた人物だにょん 素直に自分から兄さんに謝りに行くなんて…
「烏賊の甲より年の功」というのがよく分かっているにょん
それに比べて あの生意気小僧のサキ・ナノレスと言ったら…
人生上手くイカないもんだにょん あいつ 今どこをほっつき歩いているのかにょん
お前なんか にょんはどうなっても構わないにょん
でも 心配してくれる人がいる限り 早く顔を見せるべきだにょん
いい歳をして "悪ガキ"気取りはやめるにょん

そして その夜 約束通りの時刻に「nksk研究所」を訪問したにょん
流石 世に知られた科学者の研究室だけあって 高価そうなマシンやら
得体の知れない生物のホルマリン漬け(勿論ナマコも)やら 標本などが
ズラリと設置されてあって独特の雰囲気を醸し出していたにょん
まず 初対面のナカサキ博士の二人のアシスタントが博士から紹介されたにょん
名前はチサ・パイとマイ・ネーサン 二人とも多分女性だと思うにょん
彼らは「クマイ・チャン誕生の瞬間」に立ち会った程 古参の研究員という事だにょん
二人の滑舌があまり滑らかではないので その言葉がにょんにはよく聞き取れなかったにょん
まあ お決まりの挨拶だと思って にょんは満面の笑みで「よろしくにょん」と返したにょん
すると 二人共キョトンとしているにょん だから にょんは"探偵の勘"を働かせて
「じゃあ お茶を下さいにょん」
と言ったにょん すると ご両人声を合わせて
「チャー」
と答えて 席を外したにょん 因みに最後までお茶は出されなかったにょん
(「もしかして彼らもクマイ・チャンと同属かにょん?」)という考えが
ふと脳裏をよぎったにょん
でも同時にナカサキ・チャン氏の過去を勝手にほじくるのはやめておこうと思ったにょん
二人がいなくなると 博士は小声で話しかけてきたにょん
「彼らもクマイ・チャンと同属なんだ でも "出来損ない" いわゆる"プロトタイプ"って
奴でさ 『チャー』としか喋れないの ウフフフフ…」
余計な気遣いが馬鹿馬鹿しくなったにょん