別館 魑魅魍魎

カニョン探偵事務所/TRANSQUID その7

「果報は寝て待て」とは良く言ったものだにょん
獲物は向こうから 網に引っ掛かってきたにょん
と言っても 掛かったのは "怪物"じゃなく その"怪物に襲われた被害者"の方だったにょん
「明日 例の事件の被害者 ミズキ・ダンチズマンが うちの研究所に運ばれてくるんだが
カニョン君も会ってみないか?」
と ナカサキ博士から電話が掛かってきたのは にょんが
チャチャのお気に入りのブーツを汚した日の夜の事だったにょん
その翌日 『オノレセー美術館』に立ち寄り 人目につかない隙を見て 例の壁の黒い斑点の
部分を少し削って 小さなチャック付きポリ袋に入れて ポケットにしまい込んだにょん
これを ナカサキ博士に調べて貰えば 何か有益な情報が得られるかもしれないにょん
nksk研究所に着いたのは お昼休みも終わる頃だったにょん
「おお 来たね!」
「ナカサキ博士 にょんのリクエストに早速応えてくれて有難うございますにょん」
「どうだった?役に立ちそう?」
「今度は にょんが博士のリクエストに応える番だにょん」
「参ったね 全く頼もしいぜよ!カニョン君に依頼して本当によかった 楽しいもん!」
「で ミセス・ダンチズマンは?」
「そうそう大変なんすよ カニョン君 彼女は今"タイヘンなヘンタイ"状態なんすよ!ははっ!」
お昼から この博士の相手はもたれるにょん


「何でもあの事件以来 ひどい禁断症状が出てしまってね 『身体が疼く』んだってさ
ったくケシカランよ!『…会いたいだけ 会いたいだけ この場で即抱きしめて 嗚呼 すごいよ
すごいわ…』なんて安物の流行歌みたいなセリフを壊れたレコードみたいにブツブツと
繰り返しているんだよ ある大学病院まで連れていって治療を施しても
まるっきり効果なしでさ このナカサキのとこに運ばれてきたってわけ」
「ナカサキ博士は独自の治療法で重度の薬物中毒者を完治させた事があるって
聞いた事があるにょん」
「それは本当です まさに"過去の栄光"だ! しかし どこで何が役に立つか分からんもんですな
だって この人 ナカサキの心を一瞬で奪ってしまった女優さんですよ!」
「そして この事件の鍵を握る重要人物だにょん」
「そう怪物のナニを握っただけにってね!…ん? あ いや 彼女には こっちに座って貰ってます
ちょっと無理矢理 お行儀良くして貰ってるけどね…」
博士に連れられて にょんが目にしたのは まさにあの盗撮映像に写っていた主演女優その人
だったにょん 彼女は顔色も青ざめ 目の下にはきつい隈をつくって 博士の言った通りのセリフを
ブツブツと繰り返していたにょん その姿は薬物中毒者そっくり そして今から
電流で始末される死刑囚のように 両手両足を拘束されて 医療用のリクライニングチェアに
座らせられていたにょん
椅子の側のマシンの前では ナカサキ博士の例の二人の助手が施術の開始を待っていたにょん
二人の装着しているヘッドセットが場の空気に緊張感を与えていたにょん
博士もヘッドセットを付けながら にょんに話しかけてくるにょん
「うちのはちょっと荒療治 でも効果はテキメン ナカサキ赤面」
助手のチサ・パイがミセス・ダンチズマンにもヘッドセットを装着させたにょん


「準備はnksk?」と博士
「チャー」と助手達
もう一人の助手のマイ・ネーサンがPCのマウスをクリックすると
(…WIIN WIIN WIIN WIIN WIIN WIIN WIIN CHANCHARACHANCHA…)
と エキゾチックな音楽が流れ始めたにょん すると 博士と助手の三人はグルグルと
ミズキ・ダンチズマンの周りを池の鯉のように廻りながら 踊り始めたにょん
「カニョン君 ようく見ておきたまえ!これがnksk研究所名物『"SHOCK"療法』だっ!!」
(JA JA JAJA JA!!)
『もう そろそろ いい加減に 吹っ切らなければ 新しい 恋なんてさー あり得ないない』
『チャー』
ナカサキ博士は突然唄い始め 助手の二人は合いの手を打ったにょん
(中略)
『ああ そうだわ 良い男は まだまだ居るから 綺麗に なってやるわー 後悔しなさい』
『チャー』
ナカサキ博士がフルコラーラス 一人で唄い上げた時には
ミセス・ダンチズマンは完全にトランス状態に入っていたにょん
全身をブルブル震わせながら 白目を剥き 開けっ放しの口からは
唾液がダラダラと垂れ流され 股間にはビチャビチャと水溜りをつくっているにょん
「ハアハア ハアハア…フウ これで…彼女 こっちの言う事 なんだって聞いてくれる ハアハア」
乱れる息を整えながら博士は言ったにょん
「失神してるんじゃないのかにょん?」
「違う!催眠状態に入ったの!…ねえ ミズキ君 君はもう私の言いなりだよねえ?」
「あああ 先生! 私 先生の言う事なら何でも聞くわ!」
「ほうらね…じゃあ ミズキ君さ 早速なんだけど ナカサキのオチンチ…」
「やめるにょん!」