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カニョン探偵事務所/TRANSQUID その12

…だけど 世の中まだまだ捨てたもんじゃなかったにょん
この後すぐに"善意の通報者"のおかげで救急車が手配され 二人は一命を取り留めたにょん

薄れゆく意識の中で にょんはコツコツと遠ざかる足音を聞いたにょん
おそらく その足音の主が"善意の通報者"…
視力の良さが御自慢のにょんの目にその人物の足元だけがハッキリと映ったにょん

ねえ 神様…にょんをそんなに苦しめるのは…やめるにょん…



その朝 いつもとは違い 朝寝坊しないで 誰よりも早く事務所のドアを開き
そうして いつもは先に出勤している秘書のチャチャ・ルルーの仁王立ちしている姿もなく…
にょんは今回の事件を引き起こした犯人…いや容疑者…いや重要参考人がドアを開くのを
唯ひたすらに待っていたにょん
"善意の通報者"が履いていたのは『白いペンキで汚れた焦げ茶色のブーツ』だった…
サキ・ナノレスに彼女の写真を見せた時 サキは「"御主人様"に間違いない」と呟いた…
この二つの証拠が揃っていて 彼女は一体どんな言い訳をするのだろうかにょん?
そして 今目の前に置かれている箱の中に入っている例の"黒い一物" これを彼女にいきなり
見せたら 彼女はその時 どんな反応を示すのだろうかにょん?
ナカサキ博士に この"黒い一物"を見せた時 彼はツヤツヤと黒光りするこれを
マジマジと見つめながら
「こんなの生まれて初めて見た…」
と「Mouth Pussy()」の異名を持つ大きな口をアングリさせて
茫然としていたけれど あの 少女がそのまま大人になってしまったような彼女が
これを見たら…まるで想像がつかないにょん


定刻の出勤時間の二十分程前に 漸く事務所のドアが開いたにょん
そこには いつもと何にも変わらないチャチャ・ルルーの姿が…
「お早う チャチャ・ルルー!」
「おお!カニョンちゃん!もう大丈夫なの?まだ ちょっと顔色が悪いみたい…」
「おかげ様で…」
チャチャの足元を見たにょん 彼女はまだ『白いペンキで汚れた焦げ茶色のブーツ』を
履いていたにょん
「チャチャはずっと履いているにょん?そのブーツ?」
「そうだよ だって ここの給料じゃ 新しいの買えないじゃん!」
にょんは 覚悟を決めたにょん チャチャに例の箱を差し出したにょん
「あっ そうそう忘れていたにょん!今日は君にプレゼントを持ってきたにょん!
さあ これを開けてみて…」
「ええー!スゴーイ!珍しい事もあるもんだ!」
チャチャは疑う気配すら微塵も見せず 箱を受け取り 包装紙を剥がしたにょん


「フフウン…ヘエー…何が出るかな 何が出るかな…アッ!!」
今回だけは にょんの"探偵の勘"は外れて欲しかったにょん…
「"とらのすけ"…可哀想に…」
「…にょん!?…"とらのすけ"…って猫じゃなかったのかにょん?イカ墨が大好物の…」
「"とらのすけ"が猫だなんて チャチャは一度も言った事ないんさー」
「じゃあ そいつは一体何者だにょん?」
「知らないの?流行りのオモチャなんさー 子供じゃ買えない"大人のオモチャ"」
「にょんはそんなもの見た事も聞いた事もないにょん!」
「ああ ここじゃ売ってなかったんだ!正式名は…まあ言っても通じないと思うんさ
多分方言だから…だから チャチャはこれに勝手に覚えたての英語の名前をつけてあげたんさー
"伝達とか感染"っていう意味の『transmission(トランスミッション)』と 形が似ているから
イカの意味の『squid(スキッド)』 この二つを合わせましてー『TRANSQUID(トランスキッド)』
でも そのままじゃ可愛くないからー『とらのすけ』!! …チャチャは これを思いついた時
自分が天才じゃないかと思いましたっ!バイバイ!」
「ちょ ちょっと待つにょん!バイバイって言えば、何でも丸く収まると思ったら
大間違いだにょん!」